野球なネーミングだけど、本当はサッカーが好き
サッカーワールドカップ2026が始まった。
6月15日AM5時。
日本代表の初戦だ。
ショボショボの目と頭は、試合開始と同時に一気に覚醒。
手に汗握る展開は一瞬で過ぎ去り、早朝をもって1日分の体力を消耗した。
結果は引き分けだったが、試合内容は素晴らしかった。
しばらく余韻に浸りたかった。
こんな日は正直、仕事どころではない。
4年に一度のとっておきの楽しみを、誰かに奪われてなるものか。
そんな気分だった。
しかし、仕事をおろそかにしては、これからも安心してサッカーを楽しめないことも事実…。
けっきょく“大人”になったぼくは、早々に重い腰を上げるのでした。
ほんと、大人って大変ですよね。
新商品やサービスは“我が子”
さて本題です。
あ、書き手はコピーライターの佐藤です。
FOCYMのネーミングを担当しました。
ぼくが考える、ネーミングで最も大切な要素は「気持ち」です。
ネーミングしようとしている商品やサービスのことを大好きになり「この魅力をたくさんの人に伝えたい」と強く心の底から思えるようになることです。
つまりこの時点で、すでにぼくはメンバー全員のことを愛しています。
のっけから精神論みたいですみません。
でも、本当にそう思っています。
なぜなのか。
わかりやすい例が、子どもの名づけです。
親となった人は皆、必ず子の“ネーミング”を経験していることでしょう。
何日もあれこれと考え、本気でこれ以上ない、となったところで渾身の命名がなされたことでしょう。
商品やサービスに対するネーミングも、それなんです。
たとえば企業にとっての新商品は、企画~製造まで関わった人間にとって「まるで我が子」だとの声を多く聞きます。
ネーミングの仕事をすることは、人様の“子ども”の名づけをすることなんです。
本気で考えないなんて、失礼じゃないですか。
2つの目的
ぼくの仲間愛が爆発したところで、次は目的の設定です。
ここも前述の「子どもの名づけ」に近いものがあります。
子どもの名前には、親の「こんな子に育ってほしい」という願いが込められています。
その願いは、商品やサービスでいえば目的と言い換えられます。
「お客さんにこう思ってもらいたい」の部分です。
そこでユニットとしての特徴ややりたいことを整理し、次の目的を設けました。
①「これなんて読むの?」と聞かれること
②そのうえで納得感のある回答ができること
まず①を設定した理由は、ユニットの初のお披露目の場が展示会ブースだったことです。
ここでは、いかにお客さんとコミュニケーションをとれるかがカギとなります。
インパクトの強いネームは、他ブースにたくさんあります。
であれば、我々はあえてネームだけでの勝負を避け、ネームをコミュニケーションツールのひとつと考えることで、差別化をはかったのです。
FOCYM
造語かつ絶妙に変なつづりなので、初見ではっきり読める人は少ないはずです。
②については、シンプルです。
F→FIRSTYGRAPHICS(アートディレクター泊)
O→OCEAN PICTURES(映像プロデューサー東)
C→クリエイティブキャッスル(コピーライター佐藤)
Y→吉山写真事務所(フォトグラファー吉山)
クリエイター個人として存在しながらユニットになっている、まさにそのままを体現します。
これは頭文字を利用するアクロニムという非常にメジャーなネーミング手法です。
FOCY(フォーシー)はforce(=チカラ)の形容詞っぽい組み合わせとなり、お客様のチカラになるような意味合いもよく、実はこっちもかなりの有力候補でした。
ただ、造語でありながらやや読みやすすぎるかな、との懸念もありました。
が、あまりにもカッコよく読めたこともあり、メンバーの反応も上々。
自分の名前の一部が使われるって、当事者からするとやっぱりうれしいですよね。
ネーミングにおいても、生みの親の一部を使用する事例も数多く見られます。
いったん「これでいいんじゃない?」みたいになりました。
なぜMが加わったのか
全会一致の支持を得たFOCY。
これでいこうかと決断を検討していたある日。
ひょんなことから1人のメンバー増員が検討されました。
そしてその頭文字がMだったのです。
この瞬間、ぼくの頭の中で「FOCYじゃなくてFOCYMじゃん」となったわけです。
諸事情からMのメンバー参加は見送り。
しかしぼくの頭のなかでは「フォーシーム」がより存在感を強めます。
フォーシームは、野球好きにはお馴染みです。
ピッチャーが投げる球種のひとつであるストレート(直球)のこと。
ボールを投げて1回転する間に、正面から見てボールの縫い目(シーム)が4回見えることが由来です。
AI時代に「人」を前面に押し出していくぼくらのスタイルはまさに直球。
仕事のスピード感への印象や、ホップして伸びる球筋がぼくらの、お客さんの成長を表すなど、いい意味づくめです。
そして、より読みにくくなる。
残るはMの意味。
最終的にMore(もっと)としました。
ぼくらはあくまでユニットです。
信頼できる仲間がいれば、ぜひいつでも仲間になりたい。
そして意識としても、仕事をするときはお客さんも一緒の仲間として並走したい。
そうした変幻自在に入れ替わる仲間の存在を、より上をめざす追求姿勢を、これからの可能性を「M」が担っているのです。
100点ではなく、120点を
FOCYは、ある意味で100点のネーミングでした。
ただ、きっかけは偶然ではあるものの、結果としてそれ以上のネーミングにたどり着くことができました。
FOCYが出た瞬間にぼくらは「よし、これで決定!」としなかったことも、要因のひとつです。
時間的な猶予が残されていたこともありますが「まだもっといいネーミングがあるかもしれない」という期待感みたいなものがあったのだと思います。
この感覚は、ぼくたちFOCYMのクリエイティブに対する姿勢そのものです。
100点でははく、120点をめざす。
ネーミングでいえば、その最後のひと押しが、商品やサービスの一生を左右するのですから。
ネーミング案なんて、イマドキはAIがすぐに100個も200個も出してくれます。
ただぼくは、ここにAIをあんまり使いません。
だって、自分で考えるのが楽しいから。
こんなに楽しいことを、誰かに奪われてなるものか。
…そんな気持ちを、いつまでも持ち続けていたい。